ある日、東京に住む姉から「これ、一度食べてみて」とすすめられたクッキー缶。
姉と義理の兄は筋金入りのスイーツ好きで、紹介されるお菓子はだいたい間違いない。
その姉が、さらにグルメな義母から教えてもらったというから、これは間違いないと取り寄せてみた。

届いたのは、クラシカルな金色の缶。中央に美しい紋章が描かれたデザイン。
「銀座ハプスブルク・ファイルヒェン」の「テーベッカライ・クライン」という名のクッキー缶だった。
実はこのお店、オーストリア国家公認の料理人である神田真吾シェフが手がける、正統派のオーストリア料理レストラン。
けれどこのレストランの“もうひとつの顔”とも言えるのが、このクッキー缶。レストランなのにクッキーが有名で、予約をしてからカウンターで受け取るというストーリーも、ちょっと特別な感じがして心をくすぐる。

缶を開けると並ぶのは、3種類のクッキー。
そのどれもが、これまで味わったクッキーとは次元の違う美味しさで感動してしまった。
以下は、缶の中に同封されていた説明文より引用:
Vanille(バニーレ)
バニラビーンズの芳醇な香りのクッキーに、オーストリアのアンズをサンドして
Schokolade(ショコラーデ)
上質なチョコレートを贅沢に使用した生地に、ホワイトチョコレートを組み合わせて
Kinzer(リンツァー)
シナモンや柑橘の風味が広がる生地に、オーストリアのラズベリーを合わせて
説明だけでも十分魅力的だけど、実際に食べてみると、その繊細さと奥行きに驚く。

どの味も香りが立ち、素材の良さがまっすぐに伝わってくる。
派手さはないのに、記憶に残る。そんなクッキーたちだった。
無理に“丁寧な暮らし”を頑張らなくても、こういう小さな贅沢があるだけで気分は変わる。
時間に追われる毎日でも、この缶を開ける数分だけは、心がふっとほどけていくような、そんな不思議な体験。
“誰かから教えてもらって、食べて、また誰かに伝えたくなる”
そうやって静かに広がっていく、美味しさの連鎖に、幸せな気持ちになる。